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外国人研修生

中国人実習生過労死 妻ら提訴 受け入れ機関など相手に

 外国人技能実習制度に基づき、茨城県内の工場で働いていた中国人実習生の蒋暁東さん(当時31歳)が過労死した問題で、蒋さんの妻ら遺族が4日、勤務先と同県内の受け入れ機関に約5750万円の賠償を求める訴訟を水戸地裁に起こした。外国人実習生の過労死を巡る民事訴訟は初めて。
 訴状によると、蒋さんはメッキ加工会社「フジ電化工業」(茨城県潮来市)の実習生だった08年6月、寮で就寝中に急性心不全で死亡した。当時、残業は月150時間を超え、鹿嶋労働基準監督署は昨年11月、過労死と認定した。
 訴状では、同社が長時間労働を課したことが死亡につながったと指摘。地元企業の実習生受け入れのため設立された「白帆協同組合」(行方市)についても「低賃金での長時間残業を容認する指導をした」として、同制度の受け入れ機関としての指導・監督義務違反を主張している。
 同社は「訴状を見ていないのでコメントできない」とし、同組合の代表理事は「強制残業は一切なかった」と話している。

 ◆受け入れ機関が過労助長の例も
 今回の提訴について、原告側弁護団の指宿昭一弁護士は「ほかにも過労死が疑われるケースは多い。企業の労働環境を監督しなければならない受け入れ機関が、過重な労働を助長する指導をする例もあり、その責任も明らかにしたい」と語る。
 同制度は1993年に始まり、実習生は最長3年間在留できる。最近5年間の受け入れは年約4~7万人で、大半は健康診断を受けてから来日する。
 しかし、同制度の運営にかかわる国際研修協力機構(東京)が調査した結果、「脳、心臓疾患」による死亡が08年度に16人、09年度に9人確認され、全員が20~40歳代。直前まで通常の勤務をしていたのに、就寝したまま心筋梗塞で死亡したり、急に苦しみ出して倒れたりしたケースが目立つ。
 ほとんどの実習生は、技術習得ではなく出稼ぎが目的のため、企業側が無理をさせやすい。貧しい農村出身の蒋暁東さんも「娘にいい教育を受けさせたい」と来日していた。
 3日にフジ電化工業の工場や寮を見学した蒋さんの妻(34)は「いい環境ではない所で、2年半も働いたなんて信じられない。実習生を守れない制度は見直してほしい」と話している。

[読売新聞社 2011年3月5日(土)]

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